精神障害や高次脳機能障害のある患者さんの中には、上手に怒りの感情を抑えることが出来ない方もいます。
「そのような患者さんにはどのような作業療法を提供すべきだろうか?」
このようなお悩みはお持ちではなかったでしょうか?
日本作業療法学会に参加したところ、その解決の糸口になりそうな演題が2つありました。
そこで、今回はその2つの演題を参考文献とし、怒りに対する作業療法にはどのような方法があるかご紹介します。
この記事が怒りに対する作業療法でお悩みの方のヒントになればと思います。
園芸活動を用いた作業療法で怒りに対処
怒りの感情と上手に向き合うためのトレーニングとしてアンガーマネージメントがあります。
具体的な実践としては、
・怒りを感じたら頭の中で「ストップ」と合図して思考を止める
・怒りを6秒間我慢する
・一旦怒りの場から離れて冷静になる
などがありますが、ハンゴアンヒらの報告によると、この方法が効果的でない患者さんがいたそうです。
そこで気分転換とストレス発散を目的に園芸療法を用いたところ、いらいら程度の改善につながったとのこと。
園芸療法は具体的には、花の苗の植え替えや除草作業を行ったそうです。
僕は園芸療法に効果があったのは、自然による恩恵を受けたからだと思います。
(独)森林総合研究所の研究によると森林を歩いた人の状態を調べたところ、
▼リラックスした時に働く副交感神経の活動が高まった
▼ストレス時に高まる交感神経の活動が抑えられていた
などの効果が得られたそうです。
今回は森林を歩いた訳ではありませんが、園芸療法により同様の効果が得られた可能性があると思われます。
<参考>
https://www.mas-sys.com/JOTC53_Abstract/pdf/endai101621.pdf
作業療法士の助言により怒りに対処
怒りに困っているのは患者本人だけではありません。家族もその怒りに振り回されるケースがあります。
佐野の報告によると、「眠剤が中々効かないこと」「バイクの騒音」に対して苛立つ高次脳機能障害の患者とその家族に対して助言を行ったところ、効果的だったそうです。
患者に対しては「無理に眠ろうとしない。眠くなるまで、好きな音楽を流してよい」と助言し、家族に対しては「患者の言動を言葉で否定・禁止しない。患者に対して過剰反応せず、抑えたペースや声量を保つ。良い行動には笑顔で接する。」ようにアドバイスしたそうです。
すると問題行動の改善が見られたとのことです。
患者と家族のコミュニケーションパターンをよく理解した上での適切な助言は「素晴らしい」の一言に尽きます。
<参考>
https://www.mas-sys.com/JOTC53_Abstract/pdf/endai100321.pdf
怒りに対する作業療法 まとめ
今回は怒りに対する作業療法として、
▼園芸療法
▼助言
を用いた方法をご紹介しました。
いずれにせよ、その怒りの背景を理解した上で行う必要があるといえます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。